夢でいいから~25歳差の物語

先生が私の一歩前に立ってチャイムを鳴らす。


ピンポーン。


その音を合図にしたかのように胸の鼓動が増す。


私でさえこんなにドキドキしているんだから、先生なんてもっとすごいんだろうな。


「はぁい」


グレーの髪をしたおばあさんが顔を出す。


白金のような色の縁の眼鏡をかけた、どちらかと言えば細面のその顔は確かに先生と少し似ている。


先生は驚きのためか、しばし黙っていたが気を持ち直して口を開いた。


「すみません。青山楓さんでしょうか」


「え、ええ」


楓さんは怪訝そうに答える。


「私、青山と申します。青山…皐示です」


「!」


一瞬にして彼女の表情が驚きに変わった。


40年も離れていた息子がいきなり現れたんだから無理もない。


なんて偉そうに言っているけど実際のところ、24歳の私には40年という月日は想像の上でしかなく、果てしなく長い時間に思われる。


「皐示、なのね?」


目の前の現実を再確認するかのように聞く彼女。


「母さん…」


絞り出すような先生の声。


「皐示」


「…」


「ごめんね。今まで」


その言葉に先生は何も言わなかった。


だた切なそうな表情できゅっと唇を噛み締めていただけだった。