「Time is money.時は金なりか」


私はしみじみと言う。


「なんだ、いきなり」


先生はまた苦笑した。


「いや、バタバタした日々だったから余計短く感じたのかな。だから時間ってあっという間なんだと思ったら、そんな言葉が出てきて」


「なるほど。すごいボキャブラリーだ。さすが国文科を卒業しただけあるな」


「いやあ、そこをほめられても。っていうか全然関係ない気が」


「それもそうか」


下らないことで私達は笑い合う。


そんなこんなで本当に穏やかな夜の誕生日パーティーだった。


次の日、バイトが非番なのをいいことに1人で部屋でくつろいでいると、お義母さんが紙袋を抱えてやってきた。


「なんですか?これ」


「久しぶりに押し入れの奥をお掃除してたら出てきたの。いらないって言うかもしれないけど、一応皐示に渡しておいてくれるかしら」


「わかりました」


中を覗くと古びたアルバムが数冊入っている。


もしかして先生の少年時代の写真とかが収めてあったりするのだろうか。


そう考えると気になって、見たくて仕方なくなったが、先生宛てに渡された物だから先生が先に見るべきだと必死にこらえる。


そうして結局、先生が帰ってくるまでの8時間、私は誘惑との変な戦いをしていなければならないのであった。


この私よりも古そうなアルバムを開くことで、また新たな物語が始まるとも知らずに。