あの後、お面の集団は逮捕された。


いつもなら警察が来るより先に姿を消してしまうのに、今回はなぜか逃げ遅れたらしい。


やはり彼らはクリスマスイブの新聞に載っていた事件と同一犯だったが、動機や目的については完全黙秘。


警察も手を焼いているようだ。


しかし、そんな大事件も学校の窓ガラスなどがすべて修理され、先生が退院すると次第に忘れられていった。


私もいつもと変わらない生活を送っている。


「青山先生」


「ん?」


私はいまだに先生を「父さん」と呼ぶことが出来ないでいた。


本人がいなければまだいいのだが、本人を目の前にしてしまうと照れてしまうのだ。


そんなことを考えて頬を紅に染める私を見て先生は怪訝そうな顔をする。


「おい?」


「あっ、なんでもないです。遅れてすみません。昨日の宿題です」


「はい。わかりました」


「失礼しました」


私の渡した宿題を早速チェックし始めた先生に背を向け、職員室を後にする。


何も変わらない日々。


でもそれはクリスマスイブ以前の日々に戻ってしまったことになる。


普通の、教師と生徒。


これでいいんだって言っている私と、いまだに先生への想いを引きずっている私がいる。


どっちが本当の私なのかって聞かれたら、きっと後者だと答えるだろう。


あの春休みの決意から約2ヶ月。


先生への恋心を消すのに2ヶ月という時間はあまりにも短い。


三七子ちゃんには先生を父親として認めると言ったが、やはり気持ちはすぐにはおさまらない。