夢でいいから~25歳差の物語

私の声は暗がりに消えていった。


「来るわけ、ないよね」


戻ろうにも道がわからない。


救助を待つしかない。


こうしていると、思い出す。


17歳のクリスマスイブの夜はもちろん、魔王によって男友達とのツーショット写真を撮られて先生が激昂して逃げ出したあの夜のことも。


あの日は指輪をなくしたんだっけ。


そして2代目は今、私の左手の薬指で空しい輝きを放っていた。


その光はいつか1人ぼっちで眺めた街のイルミネーションとどこか重なって見えた。


綺麗なはずなのにあるはずの何かが足りなくて寂しく感じられる、みたいな。


もっとも、そう考えたのは私だけかもしれないけど。


「水橋」


懐かしい響きを持った声が背後で聞こえる。


振り向くが、そこには暗闇があるばかりだった。


例の声が扉のガタガタいう音だと気付いたのは、その時になってからだった。


水橋。


私がまだ先生からそう呼ばれていた頃。


それは先生と生徒という距離が、そして母の夫…つまり義理の父親という距離がもどかしく、ほろ苦かった頃。


そして母を忘れられない先生に、母の代わりとして付き合ってくれと頼んで正式な恋人じゃないながらも濃密な時間を過ごしていた頃。


何もかもが昔のことのように思える。