「…!」


「安井。俺、あいつを父親として助けてやれる自信がないんだ」


「先生…」


「こんな奴だからあいつにも認められないのかなぁ」


「そんな。違うと思いますよ」


「…娘、だからな」


「え?」


「義理だって、認められなくたってあいつは俺の娘だ。あいつを守るためならきっとなんでも出来る」


-回想終-


「その時、あたしは先生が流星ちゃんのことをこんなにも考えているってわかったんだ」


「…」


知らなかった。


先生、私のことでそんなに悩んでいたなんて。


私は眠っている先生を見る。


私を守ってくれたから今、先生は眠っているんだ。


胸の奥が熱くなる。


「先生、ごめんなさい。私、ひどいことばかり言ったのに先生は守ってくれた。私のことを考えてくれていた」


「ねぇ、流星ちゃん。先生を好きなのはわかるよ。でも、先生はあんなに悩んでいた。だから、認めてあげてくれないかな。先生を悩みから解放するためにも」


「好きだけど、でも先生は私の…だって?」


「そう。あんなに流星ちゃんのために悩んで、ついには身を挺して守ったんだよ。十分、誇りに値する…父親だよ」


「三七子ちゃん」


私はその言葉に涙を流しながら先生の手をそっと握った。


「先生。父親であろうとしてくれてありがとう。私、私…」


その続きは胸が詰まって言えなかった。


後ろから三七子ちゃんのすすり泣きの声が聞こえる。


窓越しに涙でにじんだ空を見た。


広く果てしなく雲1つない春の青空に私達の泣く声が吸い込まれていく。


涙が尽きたのは空がオレンジ色に染まった頃だった。