夢でいいから~25歳差の物語

私は雪山によくあるそれ用のバイクを拝借し、操作の仕方もわからないでむやみに発進させた。


「うわぁっ」


バイクはブオンと言って雪をかき分けて走り出した。


「おーい、先生ー」


ひたすら続く黒と白の世界に向かって私は呼びかける。


しかし、返事はない。


「なんで…」


風の音に紛れて聞こえないのかな。


「先生、先生!」


私は先ほどより数倍大きな声を出す。


しかし、それは吹雪の音の中へ消えていくだけだった。


それでも叫んだ。


無駄だとわかっていながら何度も、何度も。


そうして声が枯れ始めた時にはおそらく外に出てから1時間は経っていたと思う。


ちょうど山小屋を見つけた私はそこに少しお邪魔させて頂くことにした。


中に人の気配はない。


どうやら長い間誰にも使われていないらしく、天井にはクモの巣が張られている。


さらに天井に吊るされた白熱灯はスイッチを何回押してもつかなかったし、おまけに厚いホコリに覆われていたおかげで大変にむせてしまった。


よって今は雪明かりだけが頼りだ。


ネズミが潜んでいないことを祈りながら、先生にもう一度電話をかけようとポケットに手をやった瞬間、私の顔は青ざめた。


「ケータイがない…」