「おはようございます」


「あら、おはよう」


翌日、私がいつものようにバイト先に行くと、先輩の清川友里(きよかわ ゆり)さんが上品に微笑んだ。


この人は32歳なのだが、どう見ても20代半ばくらいにしか見えない容貌の持ち主で、しかもモデルのような体型だ。


さらに上品で性格もよく、私が密かに憧れを抱いている人物でもある。


また、彼女目当てでここに通いつめている人を何人も見てきた。


「流星ちゃん」


「はい」


「流星ちゃんの旦那さんってどんな人?」


「それなら何回も言いましたよ」


「だって気になるんだもの」


友里さんはなんだか私の夫、つまり先生が気になって仕方ないらしい。


まさか美綺さんみたいに過去に先生と何かあったのかと思い、先生に清川友里という人を知らないかと聞いたこともあったが、そのような名前は聞いたことがないとのことだった。


しかし、友里さんに先生の写真を見せると彼女の目の色が変わったように見えた。


何と言うのか、懐かしいものを見るような感じだった。


何なんだろう、いったい。


友里さんに聞いても「過去のことよ」の一点張りだ。


そのうち、彼女は話をはぐらかして別の人の所へ行ってしまったのだった。