夢でいいから~25歳差の物語

~Side美綺~


一歩一歩体育館に近づくごとに、時計の秒針が進むたびに先生との本当の別れが近づいている。


さっき教室で配られたプリントを見てびっくりした。


青山先生がこの学校からいなくなるなんて。


たとえ恋愛関係はなくなったとしても、学校に来た日は授業で先生の顔が見れたから、彼の声が聞けたからまだ良かった。


だけど先生がいなくなったら、それも叶わない。


永遠にあたしの前から消えてしまう。


お願い、せめてもう1度だけあの笑顔を見せて。


祈るような気持ちで体育館に入る。


「美綺っ」


所定の場所に着くと遥が息を弾ませてやってきた。


「何?」


「さっき青山先生に会ったんだけどさ、源氏って呟いてたよ。良かったね!愛する青山先生に気にかけてもらって」


「べ、別に愛してなんかないよ」


「本当にー?」


「本当だよ」


そっけないふりをしたけど心臓が高鳴り、体が一気に熱くなるのを感じた。


体は正直だなあ。


それにしても先生があたしの名前を呼んでいたなんて。


もしかして本当はまだ好きでいてくれたのかな。


って、そんなわけないか。


あたしはふう、とため息をつく。


その後、すぐに離任式開始の合図がかかる。


別れのカウントダウンがついに始まった。