夢でいいから~25歳差の物語

外に出ると、闇の中で銀杏が風の鼓動に合わせて不確かなリズムで踊っていた。


風に舞い上がる落ち葉が白衣の裾をつつく。


潰されそうな思いに、俺はたまらずしゃがみ込んだ。


本当は別れたくなんてない。


だが、十数分前に俺は別れを切り出した。


別れなければ倉島は源氏に何をするかわからない。


それが怖かった。


だから源氏が手ひどい仕打ちを受ける前に、いっそ別れてしまおうと思ったんだ。


倉島の狙いは俺達の破局。


別れを告げた今、源氏に被害が及ぶことはないだろう。


…でも、なんで。


守り抜くと誓ったはずなのにどうしてこうなる?


あんなに愛おしいと思ったのに。


記憶が何もかも鮮明に残っているのに。


「源氏、好きになって、こんなことしてごめんな。守れなくて、幸せに出来なくて…」


あの夏の雨の日に漏らした言葉が蘇る。


そう、俺は彼女を守れなかった。


倉島の圧力に屈してしまった。


もっと他の方法を探すべきだったかもしれないのに。


「源氏。俺達、もう生徒と教師に戻らないか?」


本心とは違う、偽りの言葉が頭の中で繰り返される。


「源氏…。すまない…」


彼女に謝るのはこれで何回目だろう。


俺の声は落葉の雨の中に虚しく消えていった。