「源氏、すまない」
その日の放課後、俺は理科室で唐突に言った。
「え?」
彼女は何も知らないような目でこちらを見る。
そのまっすぐで純粋な視線が胸に突き刺さって痛い。
「先生、どうしたんですか?なんか先生らしくないですよ」
うわずっている声。
本当は気付いているのだろうか。
俺が謝っている理由に。
「倉島のこと、知ってるか?」
「知ってますよ。クラスメートですし」
「あいつにばれた」
「え、まさか…」
彼女の顔がみるみる青ざめていく。
「ばれたんだ。俺達の関係が」
「嫌、嘘ですよね?!」
すがりつくような彼女の視線を無理矢理振り払うように、力なく首を横に振って否定する。
「本当だ。夏休みに俺達が駅前で抱き合ったの覚えてるか?倉島はその時に隠し撮りした写真を突き付けてきたんだ」
あの時の倉島の勝ち誇ったような顔。
思い出すだけで寒気がする。
「もし、このことが公になったらどうなると思います?窮地に陥るのは先生だけじゃない。源氏さんだって…」
俺より俺の大切な源氏(ひと)を引き合いに出した倉島。
よりによってあんな奴にばれるなんて迂闊だった。
「先生…」
その声に思わず抱きしめようとした腕を引っ込める。
秘密がばれて脅された今。
もうあの時の俺達には戻れない。
その日の放課後、俺は理科室で唐突に言った。
「え?」
彼女は何も知らないような目でこちらを見る。
そのまっすぐで純粋な視線が胸に突き刺さって痛い。
「先生、どうしたんですか?なんか先生らしくないですよ」
うわずっている声。
本当は気付いているのだろうか。
俺が謝っている理由に。
「倉島のこと、知ってるか?」
「知ってますよ。クラスメートですし」
「あいつにばれた」
「え、まさか…」
彼女の顔がみるみる青ざめていく。
「ばれたんだ。俺達の関係が」
「嫌、嘘ですよね?!」
すがりつくような彼女の視線を無理矢理振り払うように、力なく首を横に振って否定する。
「本当だ。夏休みに俺達が駅前で抱き合ったの覚えてるか?倉島はその時に隠し撮りした写真を突き付けてきたんだ」
あの時の倉島の勝ち誇ったような顔。
思い出すだけで寒気がする。
「もし、このことが公になったらどうなると思います?窮地に陥るのは先生だけじゃない。源氏さんだって…」
俺より俺の大切な源氏(ひと)を引き合いに出した倉島。
よりによってあんな奴にばれるなんて迂闊だった。
「先生…」
その声に思わず抱きしめようとした腕を引っ込める。
秘密がばれて脅された今。
もうあの時の俺達には戻れない。



