夢でいいから~25歳差の物語

「源氏、すまない」


その日の放課後、俺は理科室で唐突に言った。


「え?」


彼女は何も知らないような目でこちらを見る。


そのまっすぐで純粋な視線が胸に突き刺さって痛い。


「先生、どうしたんですか?なんか先生らしくないですよ」


うわずっている声。


本当は気付いているのだろうか。


俺が謝っている理由に。


「倉島のこと、知ってるか?」


「知ってますよ。クラスメートですし」


「あいつにばれた」


「え、まさか…」


彼女の顔がみるみる青ざめていく。


「ばれたんだ。俺達の関係が」


「嫌、嘘ですよね?!」


すがりつくような彼女の視線を無理矢理振り払うように、力なく首を横に振って否定する。


「本当だ。夏休みに俺達が駅前で抱き合ったの覚えてるか?倉島はその時に隠し撮りした写真を突き付けてきたんだ」


あの時の倉島の勝ち誇ったような顔。


思い出すだけで寒気がする。


「もし、このことが公になったらどうなると思います?窮地に陥るのは先生だけじゃない。源氏さんだって…」


俺より俺の大切な源氏(ひと)を引き合いに出した倉島。


よりによってあんな奴にばれるなんて迂闊だった。


「先生…」


その声に思わず抱きしめようとした腕を引っ込める。


秘密がばれて脅された今。


もうあの時の俺達には戻れない。