気がつくと、日は完全に暮れていた。


部屋の中は、近くに街灯がなければ真っ暗だっただろう。


雨はまだザーと音を立てていた。


腕の中を見ると、源氏が寝息を立てている。


彼女の小さな肩が一定のリズムで動いていた。


ふと、雷に打たれたように我にかえった。


そうだ。


俺達は禁忌を犯してしまった。


教師と生徒が恋愛関係にあり、同じベッドで寝ている。


合意の上だとしても、身体的に結ばれていなくても、それは明らかに倫理的にまずいことだ。


なぜここまでやってしまったのだろう。


それは時間が俺達の関係を許しているうちに、彼女のすべてを記憶しておきたかったからだ。


なのに今、心の中にあるのは後悔だった。


幼い少女、しかも自分の生徒とデートした挙げ句に家でキスして共に寝た。


そのことは俺だけでなく彼女をも苦しませる。


きっと一生、影のようにそれはついてまわるんだ。


それだけじゃない。


自分の不甲斐なさに嫌気がさしていた。


彼女を幸せになんか出来ないというのに、好きという気持ちに任せてこんなことをした。


ふざけんな、バカが。


なんて無責任な奴なんだ。


俺は自分をなじった。


いい年した大人なら、最初から源氏のために恋心を拒んであげるべきではなかったのか。


彼女には今、申し訳なさでいっぱいだった。


たまらず涙が落ちる。


「源氏、好きになって、こんなことしてごめんな」


彼女は寝息を立てているだけだ。


「守れなくて、幸せに出来なくて…」


俺の声はかすかな雨の音に消されていくだけだった。


※秋-落葉の偽りに続く