「源氏?」


俺が話しかけても彼女は無言だった。


「もしかしてお前の服か?それならここに干してあるぞ。まだ生乾きだから着られないが」


俺は先ほど干した源氏の服を指さす。


「違うんです」


「だったらどうした?悩みでもあるのか?」


「いえ、ちょっと緊張してしまっただけです。ごめんなさい。自分から言ったくせに」


「そういうことか。気にするなよ」


俺は彼女を安心させるために微笑みを見せる。


心なしか彼女の頬がわずかに桜色に染まったように見えた。


「そうだ。喉渇いただろ。何か飲むか?」


「あ、じゃあお願いします」


その言葉を聞いて俺は冷蔵庫のある部屋に行き、緑茶の入った缶を2つ持ってまた部屋に戻る。


源氏は俺のベッドに寝転がり、枕に顔を埋めていた。


「やっぱり具合が悪いんじゃないか?」


そう言って彼女をこちらに向かせて、額を合わせてみるが、熱はない。


「あたし、いつも布団で寝てるのでベッドが珍しくて」


「そうか。なら、服が乾くまで寝てもいいぞ。今日は疲れただろう」


「いいんですか?」


「あぁ。お茶はここに置いておくから起きた時に飲めばいい」


「先生は?」


「俺は適当に」


そう言って俺は隣の部屋に行き、彼女の邪魔をしないように静かに過ごすことにしたのだが…。