夢でいいから~25歳差の物語

「源氏?」


彼女は切なそうな表情でこちらを見ている。


それは捨て犬と目が合ってしまった時の感覚に似ていた。


「先生はどうしてそんなにあっさりさよなら出来るんですか」


「だって…」


これ以上、一緒にいたら誰に会うかわからない。


学校の関係者に見つかったらおしまいだ。


「あたしはまだ離れたくないのに」


「源氏、わがまま言うな。誰かに見られたら俺達、恋人同士でいられなくなるんだぞ」


「そんなのわかってます」


「だったら…」


「どうして?あたし達、何も悪いことなんかしてないじゃないですか」


「それは」


「デートくらい、この世界では数えきれないほどの人がしてることです。あたし達もその膨大な数の中の人間に過ぎません。なのにどうして、あたし達は他人の目を気にしてなきゃいけないんですか」


「それは」


「あたしはもっと…」


「それは、俺とお前が教師と生徒だからだよ」


「…」


そう。


結局はその答えに落ち着いてしまう。


男女の交際なんてものは空気の存在のように当たり前なもの。


しかし、この世には許されない関係というものがある。


不倫がそうであり、家族同士の恋愛がそうであり、また俺達の関係もそうである。


たとえどんなに愛していても、まわりは許してくれないんだ。