夢でいいから~25歳差の物語

それから電車に揺られること1時間。


そして歩くこと5分。


目的地に到着した。


「ここは…」


「水族館だよ」


「わぁ、水族館なんて久しぶりです」


季節外れの表現だが、彼女の瞳が氷柱を滴り落ちる雫のようにキラキラした。


無垢で純粋。


そんな印象を受けた。


そして、それがとても新鮮に感じられたのであった。


久々の水族館では様々なものを見た。


イワシの大群。


空飛ぶじゅうたんのように悠然と泳ぐエイ。


小さな手をちょこちょこ動かすかわいらしいクリオネ。


オジサンという名のヒゲが長い魚。


もっとも、これはヒゲではなく触覚器官らしいが。


それからうねうねと怪しく足を動かすタコ。


アザラシやペンギンを見た時は源氏が「かわいい!」と大騒ぎだった。


そこでペンギンのストラップを買ってやったところ、彼女は嬉しそうにニコニコ笑っていた。


とにかく本当に色々な海の動物を見て俺達は帰ってきたのだ。


「まだ16時過ぎだが、そろそろ帰るか」


朝、待ち合わせをした駅に着き、俺は腕時計を見ながら言う。


「…」


疲れたのか、彼女は何も言わなかった。


「じゃあな、源氏。気をつけて帰れよ」


踵を返したその時、後ろからシャツがくいっと引っ張られた。