「どうしてです」


「俺達は教師であり、生徒である。それだけじゃない。お前は未来ある子供だ。こんな20歳以上も年くった奴に1回しかない青春を使わないで、もっといい男を探せ。今が人生で一番キラキラしている時なんだぞ?」


青春時代に読んだとあるマンガの「お前は未来ある~」のセリフがすっかり頭にこびりついてしまったせいか、矢野の時に引き続き、今回も言ってしまった。


そう言って年の差があることを明確にして、あきらめさせたかったのかもしれない。


「大丈夫。お前ならきっとまわりの奴らが嫉妬するくらいの男が現れるよ」


悲しげな表情の彼女をなぐさめるように優しく言った。


「先生、もしかしてあたしが嫌いなんですか?」


俺のセリフが彼女をますます不安にさせてしまったのか、表情がもっと暗くなる。


「違うよ」


「嫌いなら言って下さい。そうすればあきらめられそうだから。でも、もし言ってくれないなら…」


「くれないなら?」


「あたし、どうすれば…」


そう言って彼女はうなだれ、寂しげに目を伏せてしまった。


なぜだろう。


その表情を見て俺の中にある感情が芽生えたのを感じた。


俺は自分の両手を見る。


俺達は教師と生徒。


だが、この手で抱きしめたい。


この手で守りたい。


この手で彼女を幸せにしてやりたい…。