その後も切なそうな青山先生の表情が頭から離れず、結局、補習は夢うつつのままに終わってしまった。


「おい、源氏」


いつのまにか誰もいなくなった会議室で青山先生があたしの名前を呼ぶ。


「はい」


「どうした?お前、ずっと上の空って感じだったぞ」


「いえ…」


「わからないところでもあったか?」


そう言って彼はあたしのところにやってきた。


そしてノートを覗き込む。


やばっ。


青山先生のイラストを描いてまだ消してなかったんだっけ。


「なになに?Mr.Aoyama…って俺じゃん」


彼は黒髪をなびかせてメガネをかけ、チョークを手に持ったYシャツの男性の絵を指さす。


「あは」


「あはじゃない。ちゃんと授業を受けなさい、授業を」


ごまかして笑ったものの、青山先生にぴしゃりと言われてしまった。


あたしが描くのはあなただけなのに。


なんで気付いてくれないの?


あたしはこんなにも好きなのに。


胸が張り裂けそうになる。


「仕方ないじゃないですか」


「何が」


「好きだからです」


「え?」


「好きだから描いてしまうんです」


「源氏」


「好きだから姿を見ただけで胸が熱くなるんです」


言ってはいけないはずなのに止められなかった。


想っても想っても気持ちが伝わらないのが悔しかったんだ。