「ねぇ、美綺は補習、受けるの?」


数日後、友達の木下遥が唐突にそう言った。


「え、補習?」


「夏休み、補習をやるって先生が言ってたじゃない」


「そうだっけ?」


正直に言って、そんなの初耳だ。


「まぁ、アタシは出ないけどね。せっかくの夏休みだもん、思いきり楽しみたいよ」


そう言って遥は、あははと笑った。


「そうだねぇ」


あたしも笑う。


って、あれ?


ちょっと待ってよ。


「遥、補習って何の教科?」


「国語と英語と数学と社会と理科だよ」


それを聞いてドキッとした。


補習に出れば夏休み中も青山先生に会えるじゃない。


「決めた。あたし、補習に出る」


「マジで!?」


「うん。だってあたし、最近まで入院してたから勉強はさっぱりなんだ」


何を隠そう、体の弱いあたしはたびたび体調を崩し、入院することも少なくはなかった。


「そっかぁ、偉いね。アタシだったらやる気になんないもん」


「偉くないよー」


だってどちらかといえば、青山先生に会いたいという不純な動機の方が勝ってるもん。


よーし、夏休みの間に絶対、先生との仲を進展させてやるんだから!


「頑張るぞ、えいえいおーっ」


あたしは拳を夕暮れの空に突き上げて叫んだ。