~Side美綺~


あたし、源氏美綺が本気で恋をしたのは14歳の時。


中学2年生のある梅雨時の蒸し暑い日だった。


「いいか?赤血球には酸素を運搬する働きがあって…」


理科の担当、青山皐示先生はテキストに視線を落としながら説明をしてる。


なんでかな。


なぜか彼を見ていると胸がざわざわする。


まるで風に頼りなく揺れる梢のように。


視線があたしに向けられるだけでドキドキしてしまう。


青山先生の授業が終わると寂しくなる。


これが俗に言う恋ってやつなの?


恋をするなんて初めてな上に、その相手が先生なので友達にも言えず、自問自答になってしまう。


でもきっと、これは恋なんだ。


マンガで得た知識を引き合いに、あたしは結論を出した。


もし、先生があたしの気持ちを知ったらどうなるだろう。


あたしは頭の中で予想してみた。


「お前はまだ子供なんだから」と言われる→78%


「彼女がいるんだ」と言われる→13%


「冗談だろ」と聞き入れてくれない→6%


その他→3%


…って、どのパターンだとしてもいい結果じゃないじゃん。


それからあたしは先生と生徒の恋物語に興味が持つようになった。


無意識に青山先生とあたしの姿を重ねるようになったのだ。


どうすることも出来ず、二次元の世界に心を委ねていた。


そんな日々に進展があったのはそれから数日後の放課後だった。