嫌な気分に心を喰いつくされそうな気がしたわたしはアルバムを閉じ、立ち上がって外に出た。


自分の存在がちっぽけに思えるほどに雄大な青空が広がっている。


そよ風がわたしの頬を撫で、青々としたみずみずしい木の葉を揺らす。


まるであの時みたい。


皐示さんと出会ったあの時。


認めたくないが、わたしはまだ彼が好きだっ
た。


しかし、以前よりその気持ちは薄れた気
がする。


それはきっと流星や皐示さんがいつも笑っているから。


あの2人が幸せそうだからなのかもしれなかった。


よし。


これで最後にしよう。


皐示さん。


これが流星の母としてではなく、1人の女として言う言葉よ。


心して聞きなさい。


「皐示さん、恋というものを教えてくれてありがとう。流星を泣かせたら許さないからね」


わたしの言葉は風の足音にかき消されて青空の彼方に溶けていった。


それはまるで風が、彼に言葉を届けてあげると答えたように感じられた。


つい、笑みが浮かぶ。


海のようにただ広がって、まるでどっしりと構えているようなその空をわたしは見上げていた。


いつまでも、いつまでも。



Special episode1「春-新緑の出逢い」完