夢でいいから~25歳差の物語

ピンポーン。


約束の時間は過ぎていたが、まだ準備は終わっていなかった。


「もう来ちゃったみたい。流星、ちょっと出てくれる?」


「うん」


わたしがキッチンから叫ぶと流星の声が聞こえた。


その後、少ししてから玄関に向かうと流星と皐示さんが見つめあっていた。


そんな2人の沈黙を破るようにわたしは言う。


「あっ、いらっしゃい。寒かったでしょ」


すると皐示さんは黙ってお辞儀をした。


「流星、言ってなかったから今、紹介するわね」


流星の表情が固いのは驚きのせいだと思いながらわたしは続ける。


「この男性(ひと)はわたしの婚約相手、青山皐示さんよ」


「…!!」


「…驚いた?」


わたしはドッキリが成功したからか、やや誇らしげに彼女を見た。


わたし達が婚約した時に作ったシナリオ通りなら、彼女は驚いたという内容の感想を述べるはずだった。


しかし、流星は泣きそうな顔で皐示さんの横をすり抜け、外に出ていってしまう。


「流星!」


わたしが叫んだ時には、彼女はすでに夜の闇の中だった。


「あいつ…」


皐示さんがぽつりと呟く。


わたしはわけがわからず、しばらく動けなかった。


「睡蓮さん、何をしているんだ。早く彼女を」


「あ、えぇ」


戸惑いながらもわたし達は流星を追うことにし、寒空の下へ飛び出した。