夢でいいから~25歳差の物語

「遅かったね。どうしたの?」


家に帰ると、流星が探るような目付きで話しかけてきた。


「ちょっと急用を思い出しただけよ」


「急用?」


「まぁ、たいしたことないわよ」


「ならいいんだけどさ。ただちょっと心配だったの。何か嫌なことでもあったんじゃないかって」


「大丈夫よ」


心配してくれていたんだ。


胸の奥がじーんと熱くなる。


そして恋愛にのぼせ上がって我が娘に心配をかけていた自分が情けなく思えた。


でも気持ちが止まらない。


「流星、今日はね」


「ん?」


「夕食を思い切り豪華にしようと思う」


「えぇ!?」


嬉しくて、嬉しすぎて夕食の支度にも気合いが入る。


別に彼が来るわけでもないのに。


「母さん、やっぱり何かあったでしょ」


「何もないってば」


流星にはまだ言えないし、言うつもりもない。


彼女と青山先生の関わりはまだないからいいとも思っている。


いずれ、頃合いを見て話せばいい。


わたしはそんな風に思っていた。


だけど、本当はさっさと言っておけば良かったのかもしれない。


この1年半後、流星も青山先生に恋心を抱いてしまうのだから。


鈍感なわたしが流星を不審に思ったのは、彼女が高校2年生のクリスマスイブだった。