気付くと、辺りがだんだん夕闇に包まれ始めていた。


わたしは青山先生に頭を下げる。


「すみません。ずいぶん長い間、お引き止めしてしまいました」


「いいえ、構いませんよ」


「ありがとうございます。では、わたしはこれで」


わたしが立ち上がり、青山先生に背を向けた時だった。


「水橋さん」


初めて彼に名前を呼ばれた。


そのことがわたしをとてもドキドキさせた。


「何でしょうか」


「また会えるといいですね」


青山先生の意外なセリフに戸惑いながらもわたしは笑って言った。


「会えますよ。きっと」


それはわたしの単なる願望に過ぎなかった。


しかし、頭の中では「またあのスーパーに行けば会えるのではないか」と思っていて、偶然を装った出会いの方法を考えていた。


「母さん、今日も機嫌いいね」


買い物をして家に帰り、夕食を食べていると流星がそう言った。


「そう?」


平然としたそぶりを見せながら、心の中では恋をしてしまったことを見破られることを恐れてドキドキしていた。


「なんか授業参観の辺りから変だよ」


「え!?そうでもないって」


なんでこの子はそういうところは鋭いんだろう。


いつもの彼女なら探し物にしてもさんざん騒いだ挙句、最終的には探し始めた場所で見つけるというくらい天然さんだというのに。


わたしはその話を適当にごまかし、さっさと片付けを始める。


流星も追及などはしないで部屋に戻っていき、話はうやむやのうちに終わった。