「でもお前は俺の…」


「私、先生を父親として見れません」


「…!」


どうして私はこんなことを言っているの?


確かに本当のことだけど、もっと良い言い方があるはずなのに。


「私はあなたを見ると苦しくなるんです。苦しくなるだけなんです」


「お前…」


ああ。


私の口をふさいで。


お願いだから。


「先生。心配っていうのは親としてですか?生徒としてですか?それともまた別のことですか?」


「…」


わかっていた。


これを言ってしまえば先生が言葉につまってしまうって。


私は最低だ。


先生を見ると苦しくなるのは本当だけど、それ以上に胸がときめいて愛しく思うのにこんなことを言ってしまうなんて。


ねぇ、誰か止めて。


そうじゃないと私、言ってしまう。


先生をこれ以上傷つけたくないのに、傷つけてしまう一言を。


「私、もう先生に学校以外で会いたくないんです。父親として認められないんです。だからもう…」


こうやって嘘ばっかり並べる自分がたまらなく嫌になる。


本当は気持ちが溢れて、今すぐにでも抱きしめてしまいたいというのに、私の口から出るのはひどいことばかり。


素直になれない。


「…ごめん。迷惑だったよな」


そう言って目を伏せる先生。


そんな顔、見ているのもつらいのにそんな顔にさせたのは私だ。


「じゃあ…」


パタン。


ドアがむなしく閉まる。


私はその場でしゃがみ込んだ。


どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。


いくら先生をあきらめようって決意したからって、あんな言い方、していいわけがないのに。