それから何日経っても青山先生のことが頭から離れない。


声も、笑顔も、香りも、ときめきも、あの時のすべてがまるで烙印を押されたかのようにしっかりと脳の細胞1つ1つに記憶されている。


会いたい。


あの人のこと、なにもかも知りたい。


好きな色から奥さんがいるのかどうかまで。


恋ってこんな感じだったっけ。


疑問が浮かび、わたしは遠い記憶を脳の引き出しから取り出す。


確か健一郎さんの時はもっと穏やかな感じだったはず。


まるでせせらぐ小川のように。


なのに今は、まるで氾濫した川の水のごとく溢れ出る激情が体中を駆け巡る。


頭がおかしくなりそうだ。


恋心なんて、ときめきなんて、そんなものは遥か彼方の遠い自分の世界に置き忘れてきたはずだったのに。


そう思いながら、目の前でわたしが作った料理を笑顔で食べる流星を見る。


この子さえいてくれればいいはずだったのに。


青山先生も欲するわがままな自分が顔を出す。


もし3人で暮らせたら。


そんな夢みたいな妄想が浮かぶ。


バカね。


直後、自分を嘲笑する。


本当は青山先生も含めた3人で暮らすなんて考えていないのよ。


今の妄想だって一瞬で我にかえれるほど脆弱(ぜいじゃく)なものだったじゃない。


そう無理に思い込むことで自分を支えるしかなかった。