「たぶんさ」


しばらくの沈黙の後、先生はいきなり口を開いた。


「みんな何かの使命を持って生まれてきたんじゃないかな」


「使命?」


「誰かを守るためとか、誰かのそばにいるためとか。それが家族であって、友達であって、恋人である」


先生の言うことが正しいかはわからないが、私はうなずく。


「じゃ、先生の使命って何なのかな」


「もちろんお前を守ることだろ」


「もう!」


照れ屋のくせに先生ったら恥ずかしいことを平気で言うんだから。


この人ってこんなキャラだっけ?


それともキャラ崩壊?


あぁ、せっかくの凛々しく美しいキャラが…って、何を考えているんだ、私は。


まるでただのバカップルみたいだ。


でもそう言ってもらえて嬉しいから私は笑顔でこう言う。


「私の使命だって先生を見張ることなんだから」


「見張る?」


「人間不信を克服したのって大学生の時なんでしょ?なんか、先生が20代の時って超遊んでそう」


「なんだそりゃ」


「女の扱いに手慣れているかは別にして、とにかくモテモテだったでしょ?」


「ひどいな」


「違うの?」


「…」


「ほら」


私は笑った。


否定してほしい気もしたが、私は信じている。


先生がもう誰のところにも行かないと。


心は澄み渡った空のように晴れやかだった。


「大好き、先生」


私は満面の笑みで言った。