スーッと風が瑠璃色の空を走っていく。


私は病院の屋上で1人で佇んでいた。


あれから美綺さんは病院に運ばれた。


気絶した彼女の顔もまた穏やかで、私は複雑な気持ちだった。


魔王の正体。


明かされた真相。


それらが引き起こした事件。


今の私にとっては理解し難いことばかりだ。


先生にあんな暗い過去があったなんて。


美綺さんが魔王だったなんて。


「流星ちゃん」


振り向くといつのまにか三七子ちゃんがいた。


「三七子ちゃん。美綺さんは?」


「幸い、命は助かった。今は警察病院だよ」


「そっか。良かったぁ」


「でも彼女が元気になったら逮捕する」


「そうだよね…」


当たり前のことなのにちょっと釈然としなかった。


「ねぇ、流星ちゃん。先生が魔王のふりをしていた理由、教えようか?さっき彼から話してきたんだけど」


「いいよ、もう」


なぜならここで1人で考えて1つの結論に至ったのだから。


美綺さんが魔王なのに、先生が魔王のふりなんかしていたってことは考えられることは1つ。


先生が美綺さんをかばったということだ。


「いいんだよ、もう…。先生のことなんか」


先生はどうして三七子ちゃんには話すの?


どうして私には教えてくれないの?


先生にとって私は何なんだろう。


先生がここにいない今にとっては行き場のない疑問が湧いて止まらない。