沈黙の後、私はおそるおそる振り向く。


そこには銃を落としてその場にしゃがんでいた美綺さんがいた。


じゃあ、今の銃声は?


「銃は一般人が持つ物ではありませんよ。源氏美綺さん」


聞き覚えのある声が響く。


コツコツとハイヒールの音がしてその人が姿を現した。


「や、安井!?」


「三七子ちゃん!」


そう、そこには銃を片手に持った三七子ちゃんがいたのだ。


そうだ、彼女は警察の人間なんだっけ。


ずっと会っていなかったので、高校生の時から警察が夢だったというのを忘れていた。


「お久しぶりね、流星ちゃん。そして先生も」


突然の登場に驚く私達にクールな笑みを振りまき、そして美綺さんの方を見る三七子ちゃん。


「あなたを銃刀法違反及び殺人未遂の容疑で逮捕します」


美綺さんの顔色に変化はない。


むしろ穏やかな表情にさえ見えた。


「やはり浅はかでしたね。復讐なんてことを企てたのは」


その次の瞬間だった。


彼女の口の端から何かが落ち、白いブラウスに点をつくった。


あれはどう考えても…血だ。


「美綺さん!」


この時まで私はすっかり彼女が病弱ということを忘れていた。


「ふふ…あたしがバカなことをしたから罰が当たったんですね。本当は無理をするなとお医者さんにも言われていたんです。でもいいんです。あたしは復讐だけのためにここまで生きてきました。だから悔いはありません…」


そう言って彼女は力尽きたようにその場に倒れてしまった。


「源氏!」


「美綺さぁん!!」


先生と私の悲壮な叫びが夜更けの街に響いたような気がした。