逆に私は彼女に聞き返す。


「だったらなぜ逸らしたんですか?」


銃口は明らかに私や先生のいる方向と違う場所に向いていた。


「た、たまたまです」


そう言ってまた先生を撃とうとする。


「先生を撃つんだったら私を撃って下さい」


私は先生の前に再び立ちはだかる。


「流星さん、そこをどいて下さい」


「嫌です」


「でしたら2人とも撃ちますよ」


「いいです。先生と死ねるんだったらそれも本望ですから」


「流星」


驚いたような顔をする先生。


「では、覚悟はいいですか?」


私達はじりじりと後ずさりをするが、ついに端っこまで追い詰められてしまった。


「そこまでですね」


冷たく、ガラスのような目に私達を映してそう言う美綺さんに、今までの優しい彼女の面影なんてない。


下手に動けば殺されると悟り、2人でじっと息を飲んで彼女を見る。


「これでやっと8年間の復讐計画に終止符が打てます。今こそ父の仇を」


彼女の引き金を引く指にぐっと力が入ったように見えた。


「流星。逃げてくれ」


「ううん、先生。あなたを1人にはさせない。私達、ずっと一緒だから。私、どこまでも行くよ」


私はそう言って、しがみつくようにぎゅっと先生のYシャツを両手でつかんだ。


先生と一緒ならどこだっていい。


そう決意して目を閉じた直後だった。


バキュゥゥン!


空間を突き破るような銃声がまた聞こえた。