「恋愛関係だなんて」


私はぽつりと言う。


あのネオン街のにぎやかさが嘘のように、沈黙が続く。


その沈黙を破ったのは美綺さんだった。


「当時中学生だったあたしは、まさか青山先生が父を殺した青山謙逸と関係があるとは思いませんでした。どこか顔立ちが似ているような気もしていましたが、疑うことはありませんでした」


「…」


「でも8年前、つまりあたしが19歳の時に母の部屋で偶然、証拠となる書類が出てきて。それで知ってしまったんです。先生があの殺人鬼の弟だって」


「…」


私も先生も何も言わなかった。


言えなかった。


「先生のことは本当は今でも好きです。でも、あなたは始末しなくてはならない。なぜならこの8年間、それだけを考えて生きてきたからです。それだけがあたしの生きる糧だったんです」


「先生はあなたのお父様を殺してなんかいません」


「でもあの男は死んだんです。謝罪することもなく刑務所で自殺したんです。弟ならその責任くらい取ったっていいはずです」


美綺さんは先生に再び銃を向けた。


「やめて下さい」


私は先生をかばうように先生の前に立つ。


「流星!離れろ」


先生が私を引っ張るが私は抵抗した。


「嫌よ!」


その瞬間だった。


バキュゥゥン!!


夜空をも引き裂くような聞き慣れない音がした。


そうか、銃声…。


それを理解したのは数秒経ってからだった。


それからしばらく私達は静寂の世界の中にいた。


やがて美綺さんが震えた声で独り言のように言う。


「なぜ…よけないのです…」