「待って下さいよ」


私はさらにしゃべろうとする美綺さんを遮る。


「あのお面の集団は私達の学校の他に、いくつもの学校を襲ってきましたよ。それにどうやってあんな人数の人間を集めたんですか?」


「どうやってって、お金で雇っただけです。そして他の学校まで襲わせたのは、単なるカムフラージュに過ぎません。本当の狙いはあなた達の学校だったんです」


「カムフラージュって」


「1つの学校を襲うのはその学校に恨みがあるのかと疑われます」


「いや、でも」


「その学校の関係者の人間関係が洗い出され、あたしが青山先生と関わりがあるとわかったらいけませんからね」


フフ、と笑う美綺さんはまるで魔女のようだった。


「でも美綺さんは先生の元教え子にすぎません。もし仮に警察がただの昔の教え子まで調べるとしたら、膨大な数になって埒(らち)があきませんよ」


「それは」


ここで彼女は一息入れて言った。


「あたしがただの教え子じゃなかったからです」


「ただの教え子じゃなかったって…どういうこと?」


すがりつくような視線を先生に向ける。


彼はまだうつむいたままだった。


「青山先生はあたしの中学の時の先生でした。それと同時に」


「源氏!」


先生が言うが、美綺さんはためらうことなく私にこう言い放った。


「それと同時に、恋愛関係にあったんです」


「…」


衝撃が強すぎて何も言うことが出来なかった。


私が入院した時に言われたあれは、冗談なんかではなかったんだ。


ただその場に立ち尽くすだけだった。