「…」


先生の話を聞き終わっても、しばらくは何も言えなかった。


「42年間とは言ったが、話す必要があるのはここまでだ」


「ちょっと待ってよ」


納得出来ないよ。


「先生が教師を志す理由も、警察をあまり良く思わない理由もわかった。だけど先生は悪くないのに、どうして魔王になってしまったの?それに、美綺さんはどうして先生を撃とうとしたんですか?」


「流星さん」


美綺さんの凛とした声がやけに耳に響く。


「確かに今の青山先生の話に偽りはありません。でも、先生はあなたに1つだけ嘘をつきました」


「え?」


私が先生を見ると彼は決まりが悪そうに下を向いてしまった。


「それは魔王のことです」


「魔王のこと?」


「えぇ。青山先生は魔王じゃない。本当の魔王は別の人だったんです」


「なんで先生はそんな嘘を?それに本当の魔王って結局誰なんですか?」


「それは他でもない。あたしです」


「美綺さんが…魔王?」


頭がついていけない。


理解出来ない。


「はい。オルゴールも奇妙な手紙も全部。メールはサブアドを使って送りました。電話は変声器を使いました。ちなみに流星さんの電話番号は教えて頂いておりましたので問題ありません。あなた達の結婚式の時に先生にケガを負わせようとして階段から突き落としたのもあたしです。そして…」


「そして?」


「流星さん、あなたが高校生の時に変な集団が学校に押し掛けてきたの、覚えていますか?」


「はい」


「それもあたしの仕業です」