人付き合いを何とかしなくてはと思い、高校までのようなことはやめて友達をつくって一緒に遊び、勉強を教え合うことにもだいぶ慣れた大学2年生の7月。


俺は友達に強引に誘われ、夏休みに大学の近くの塾でバイトをすることになってしまった。


「森山!俺、塾のバイトなんてやだよ。面倒くさい」


「いいじゃんか。オレ1人だと心細いんだよ」


「何が心細いだ。だったら俺じゃなくて他の奴ら誘え。神田とか蔵石とか」


「まぁまぁ、そう言わずに青山。オレの前のバイト先の女の子の中で一番かわいい子、お前に紹介してやるからさ」


「いいよ、興味ないし」


「寂しい人生だねぇ。1度きりの人生なんだ、思う存分楽しもうぜ」


「余計なお世話だよ」


「な、頼むよ皐示さん。一緒にバイトやろうぜ」


「やめろ、皐示さんだなんて。俺の嫁さんとかじゃあるまいし」


「何?もしかしてオレに嫁いでほしいのか?」


森山は気持ちの悪いことを言うが、俺は無視する。


「まぁ、オレに嫁がれたくなかったらバイト、一緒にやるんだな。はっはっはっはっ」


こうして塾のバイトをめぐる押し問答は、森山の高笑いで締めくくられてしまった。


「くそう。なんでこんなことになるんだ」


「文句を言っても後の祭りだぞ」


数日後、バイト先に向かう道中でぶつぶつ言っても森山にぴしゃりとやられてしまうだけだった。