夢でいいから~25歳差の物語

「…」


彼女はばつが悪そうな表情で押し黙っている。


「まさか…」


「ごめんなさい、皐示。私達、あなたに嘘をついていたの」


彼女は急に頭を下げた。


「あなたのご両親はね、行方不明なの」


「え!?」


彼女曰く、俺の両親は、皐示をよろしくお願いします、という内容の手紙を残し、誰にも行き先を告げることもなく家を出ていってそれきりなのだそうだ。


やはり兄貴のことで近所の人間から嫌がらせを受けていたのだろう。


父も母も借金はなかったし住民とのトラブルもまた、一切なかった。


あの事件が起こるまでは。


「はは…」


それを聞いた時、俺は兄貴への怒りを通り越して笑ってしまった。


自分はこんなにも恵まれていない。


いや、叔父や叔母がいるからまだいいが、兄貴が犯罪者っていうだけで輝いたはずの青春のほとんども両親も失ってしまった。


そうしていつしか叔父と叔母以外を信用出来なくなっていた俺は勉強だけが友達になっていった。


クラスメートは小学や中学の時に比べれば遥かにいい奴ばかりだったが、この時の俺は彼らと付き合う気なんてまるでなかった。


幸か不幸か、おかげで有名大学に受かり、叔父や叔母を喜ばせることが出来た。


そんな俺が教師になるきっかけが訪れるのだった。