それから数日。


私は穏やかな春休みを送っていた。


もっとも、先生への想いは断ち切れていないが。


だから会いたくなってしまった時は、修学旅行の時にこっそり撮った写真を見ている。


思えば、修学旅行の時は青山先生に限らず、色々な先生を撮っていたなぁ。


懐かしい思い出にしんみりしていると、たちまち秋留ちゃんの声で現実に戻される。


「流星ちゃん、買い物に行ってくるね」


「あっ、行ってらっしゃい」


パタン、とドアがしまる音が聞こえて1人きりになったのを思い知らされた。


1人は嫌だ。


色々なことを考えてしまう。


もちろん先生のことも。


いや、むしろ先生のことを一番考えてしまう。


いつもポーカーフェイスの中、たまに見せるまるで川の下流のように穏やかな優しい微笑み。


なんとも言えない特徴のある低い声。


クリスマスイブの夜に見た月光に照らされた、月以上に美しいあの寝顔。


…こんな状態で本当にあきらめられるのかな。


私はギリギリと締め付けられる胸を押さえた。


それでも痛みはおさまらず、激しくなっていくばかりだ。


「甘い恋」とは無縁な、この「苦い恋」。


先生がいるあの家に行きたい。


そうして決意が崩れかけては、頑固なプライドがたちまち元通りにしていく。