「ここかな」


私はケータイのディスプレイに示されていた場所を見て言った。


先ほどまでのネオン街に似合わない、廃墟となったさびれたビル。


なぜこんな場所に先生はいるんだろう。


そんな疑問が頭をかすめるが、まぁいい。


行ってみればわかることだ。


真正面の自動ドアは沈黙して1寸も動かなかったので、横にある、錆びて元は何色だったのかわからない非常階段を駆け上がる。


足音が鳴るのと同時にギシギシと軋(きし)む音が聞こえた。


視界に現れたこれまた錆びたドアのノブを回す。


しかし、錆びているせいかうまく回らない。


そこで体当たりを3回ほど繰り出すとすき間が出来た。


そのすき間に手を入れて力の限り前面に押し出すと、ドアが開いた。


入ると同時にカビと埃が混じったような、あまり気分のいいものではない臭いが鼻をつく。


咳をしてから私はとりあえず奥の階段に進んだ。


階段の先にあったドアを開けると屋上らしく、闇の世界が広がっていた。


「では復讐させて頂きましょう。魔王さん」


そんな声がして見ると、誰かと先生が見えた。


しかも相手は拳銃を先生に向けて突き出している。


まずい!


「やめてー!」


私は腹の底から闇をも切り裂くような声を出し、先生に駆け寄った。