「先生!どこにいるの!?」


先生が家にいないとわかった私は叫びながら外に飛び出した。


まずは母に電話をかけてみる。


「もしもし?」


いつもと変わらない穏やかな声がする。


「母さん。ね、先生知らない!?」


「え?知らないわよ。皐示さんがどうかしたの?」


「なんでもない。ただ帰りが遅いから心配になっただけ」


いつかのようにとっさに嘘をついてしまった。


しかし、騒ぎを大きくするわけにはいかないから仕方ないよね。


その後、夜の街を矢のごとく駆け抜けながら母以外の色々な人に電話をかける。


しかし全員、異口同音に知らないと言った。


何か知っていそうな美綺さんですら知らなかった。


「あ、そうだ」


GPS機能を使おう。


ケータイを操り、しばらくして示された先生の居場所を見て首をひねる。


「なぜこんな場所に?」


そう呟いて私は息を切らしてその場所へ向かう。


ここまで来れば20分とかからない。


5分ほど走っただろうか、辺りには先ほどまでのネオン街のような華やかさは失われて夜の闇にすっかり包まれ、街灯の明かりだけが頼りとなった。


そうだ。


先生に電話してみようかな。


そう思って電話をかけたが、出ない。


2回目にかけた時にはつながらなかった。


電源を切ってしまったのだろうか。


不安が募る。


私はまた走り出す。


向かい風がヒュウと音を立てて闇の中に溶け込んでいった。