「…お前か」


俺は声のした方をにらむ。


そこには1人の人間がいた。


「はい」


「殺すなら殺してくれ。それを覚悟で来たんだ」


「そのわりにはさっき、奥様の名前を呟いていらっしゃいましたが」


「黙れ、お前に何がわかる」


「まぁまぁ、そんなにむきにならないで下さいよ」


相手があまりにも余裕なので俺はつい舌打ちをした。


「おぉ、怖い。以前のあなたはもっと優しかったのに」


「何がしたいんだ?」


「魔王の正体は…」


「あぁ、わかっているさ」


「それはよろしい」


「ふん」


俺はコンクリートの地面を蹴った。


「では復讐させて頂きましょう。魔王さん」


「…!」


気付くと銃口が向けられていた。


黒光りするそれがあまりに不気味すぎて、足がすくむ。


「殺すなら殺してくれって言いませんでした?わかった。怖いんですね?これが」


相手は嘲笑するような言い方をした。


「うるさい」


「まぁ、いいです。ずっとあなたを追いつめてきた。そして今、ようやく戦いに結末が…」


相手の指が引き金を引こうとしたその時だった。


「やめてー!」


「な、流星!?」


そこに現れたのは今、1番心が求めていた人間だった。