「ごめん、流星。本当にごめん」


「嘘よ、こんなの嘘だよぉー!」


俺が謝ると彼女は号泣してしまった。


自分が彼女にそうさせていると思うと、自己嫌悪に陥らずにはいられなかった。


だが、もしかしたらこれで良かったのかもしれない。


これで彼女が俺を嫌いになってくれれば、これから始まる戦いに巻き込まなくて済む。


そして心置きなく戦いに行ける。


これまでのすべての戦いに決着をつけ、終焉を迎えさせるための戦いに。


最後に彼女をこの手で抱きしめたいと思ったが、今の俺にそんな資格はないような気がして伸ばしかけた手を引っ込めた。


そうしてしばらく時間が経ち、眠った彼女の顔を眺めた。


その後、渇きかけた涙をハンカチでいたわるようにそっと拭いてやる。


また時間が過ぎて夜が来た。


月明かりがやけにまぶしい。


しかし月は満ち、また時も満ちた。


俺はある人間と約束していたのだ。


満月の夜、会おうと。


「ごめんな。これですべて終わるから…。お前は生きろよ」


俺は着ていた上着を彼女にかけてやってから最後になるであろう抱擁をし、そっと唇を重ねた。


心が愛しさで乱されながらも静かに立ち上がる。


最後の戦いだ。


流星、たとえもう会えないとしてもお前をずっと愛している。


心の中でそっと告白をし、俺は夜の闇に駆け出した。