あのクリスマスイブから3ヶ月近くの月日が流れた。


「母さん」


「何?」


「私、これから…秋留ちゃんのところに住む!」


「ええっ!?」


こうして私がいとこのお姉ちゃん、吉澤秋留(よしざわ あきる)の家に住みつくことに決めたのは、まだ肌寒さの残る3月のことだった。


理由は、大学生になったら1人暮らしをしたいので親離れの練習をしたいから。


…というのは表向き。


本当の理由は、母と先生が楽しそうに話しているのを見るだけで苦しくなるから。


私はフラれたけど、気持ちはまだ残っている。


それどころか一層強まるだけ。


だけど進む勇気も戻る度胸もない。


だから私はこの恋から「逃げる」んだ。


私は先生が好き。


母とは事実婚とはいえ、「お父さん」なんて呼べるはずがない。


あきらめきれない。


だから無理矢理断ち切る。


会うことも少なくなればきっと自然に終わる。


たとえ時間はかかっても。


そうして春休み、家に秋留ちゃんが迎えにやって来た。


ちなみに彼女は大学2年生になる。


出発の時、私は後ろを振り返って17年間住み慣れた我が家を見た。


この家とも当分お別れか…。


この恋心が消えるまでここには帰れないのだ。


「さよなら」


呟いて、母と先生の声援を背中に受けながら秋留ちゃんと歩き出す。


こうして私は慣れ親しんだ我が家から無理に旅立った。


先生への思いを消すために。