「今、何て?」


お願い。


冗談だって笑って。


「魔王は俺なんだ」


私の心の叫びが届くはずもなく、先生は淡々と言った。


「嘘でしょ?」


「いや、本当だ」


おかしい。


先生を疑っていた時は考えていなかったけど、おかしいよ。


だって目的がわからない。


何のためにこんなことをしたのか。


こんなことをしても先生にメリットなんて1つもなさそうだ。


おまけに矛盾だらけ。


先生の暗い過去の記憶をフラッシュバックさせるようなあの不気味な文面の手紙なんて、自分で打ったとしたら墓穴を掘るようなもの。


「先生!」


私は先生の両方の肩をつかむ。


まるですがりつくように。


「ごめん、流星。本当にごめん」


「嘘よ、こんなの嘘だよぉー!」


年がいもなく号泣してしまう。


先生を信じると決めた矢先、こうなるなんて。


先生は私にすっと手を伸ばそうとしたが、すぐにその手を引っ込めてしまった。


その後、どれくらい泣いたかなんて覚えていない。


日は暮れ、私は泣き疲れていつのまにか眠ってしまった。


「ごめんな。これですべて終わるから…。お前は生きろよ」


そう言って私にキスをし、抱きしめた後に先生が静かに夜の闇に消えていったことにも気付かないで…。