「『恋』、『呪い』」

「え?」


そう、黒ユリの花言葉はそんな感じだった。


「母さん、これっていつ送られてきたの?」


「1時間半ほど前よ。物音がしたからドアを開けたらこれがあったの」


「1時間半前ですって!?」


ちょっと待ってよ。


家からここまで来るのに1時間半かかる。


先生が10時ちょうどに家を出ていった。


それは私が家を出る約1時間半前。


そして先生がもしここに来たとしたら、この家に到着したであろう時間は11時30分前後。


つまり今から1時間半前だ。


計算がぴったり合ってしまう。


まさか!


私はケータイを取り出し、先生に電話をかけた。


「もしもし?」


「もしもし。流星です」


母に聞こえないように数歩後ろに下がって小声で話す。


「先生、今どこ?」


「ああ、家だよ。今着いたところ」


「!」


家ですって?


その辺とか適当に言ってくれれば、違う場所に行っていたかと思えたのに。


しかも今着いたところということは、11時30分にここに来てまっすぐ帰ったとすると計算がぴったり合ってしまう。


そもそも休日だからって、なぜ今日に限って散歩になんか出かけたの?


「嘘でしょ…」


私はそれだけ言って一方的に通話を終了してしまった。


「流星?」


怪訝そうな母の声がする。


風が吹いて木々がざわめき始め、私の心もますます揺れを増していた。