「ところで、俺を疑っているって言ったよな。どういうことだ?」


「あの」


どうしよう。


本当のことを言って傷つけたら嫌だ。


さんざん疑ったくせにそんなことを考えてしまう。


矛盾する気持ち。


しかし、ここは正直に話してはっきりと白黒つけたいと思い直し、私はすべてを話した。


入院していた時の魔王の行動とセリフ。


最近の先生の様子。


そして、私が先生を疑っていること。


すべてを話し終えると、一仕事終えたような気分になった。


先生の顔には驚きの色がはっきり現れている。


この後、怒り出すのか。


それとも呆れるのか。


はたまた認めてしまうのか。


しかし、しばらくの沈黙の後に示した先生の反応はその中のどれでもなかった。


ただ秋にふと感じる哀愁のような寂しい笑みを浮かべただけだった。


それは犯行を認めた犯人が浮かべるあきらめの笑みにも見えるし、妻に疑われて寂しく思って浮かべた笑みにも見える。


「ハハハ…」


先生の乾いた笑いが部屋に拡散してなくなる。


「先生」


先生の頬には一筋、光るものがあった。


「ハ、ハハ…ハハ…」


その笑う声に感情なんて微塵も感じられず、まるでネジが取れて狂ったおもちゃのようだった。


いったいどうしてしまったのだろうか。


そして私は何も言えず、まるで人形のように動けないで戸惑うだけだった。