「おい、どこだ?流星!」


「ここよ。気付いて」


「おーい、いたら返事しろ」


「待ってよ、先生」


呼んでも足は鉛をつけたかのように重くて動かない。


そして先生はだんだん小さくなり、ついには視界から消えていく。


嫌な夢。


先生を呼んでいるのに彼は気付かないで先に行ってしまう。


私は金縛りにあったのか、体が動かず先生に置いていかれる。


そして誰かが叫ぼうとする私の口をふさぎ、首を締める。


「う…っ」


現実世界に戻ると目の前に誰かの影。


その影は、ついさっきまで見ていたはずの夢に出てきた誰かとまったく同じことをしていた。


「嫌…」


口をふさがれているのと恐怖とで情けない声しか出ない。


「もう少し静かに出来ないのか?」


押し殺したような、くぐもった声が聞こえた。


どうやらこのセリフは首を締めている男のものらしい。


「あなたは…誰?」


「魔王だよ」


「!」


戦慄が身体中に走る。


それはまるで電気が一気に体に流れたかのようだった。


「魔王…。何のためにこんなこと…」


ヤバい。


意識が薄れていく。


思考回路に霞(かすみ)がかかっていくかのようだ。


「お前を苦しめるためさ」


その刹那、魔王の手に力が入る。


「っ…」


意識を失う直前、魔王の声が聞こえた。


「どうだ?愛しい男の手によって意識を失っていく気分は」


先…生…?