「よっ」


あれから美綺さんが帰り、寝たりぼーっとしたりして時間をつぶしていると16時過ぎに先生がやってきた。


「わーい、先生」


「な、なんだ?」


妙にテンションの高い私の様子に多少、驚く先生。


「会いたかったですー」


「そりゃどうも」


妙に早口でそう言っている。


まったく照れ屋なんだから。


なんて思うけれど、そんなところもまたかわいいし好きなんだけどね。


まぁ、のろけはこのくらいにしておこう。


「なぁ」


「はい?」


「誕生日、祝えなかっただろ?だからほら」


そう言ってケーキの箱を差し出してきた。


とたんに私の目が輝きを帯びる。


「わぁ。ありがとうございます、先生。嬉しい!」


「どう致しまして。それより、敬語はやめにしないか」


「はい?」


「いや、夫婦なのに敬語は変だろ?今さらだけど」


今のセリフの夫婦の部分が、照れていたらしく若干小さい声だったのはおいておこう。


「あ、そうですね。じゃなかった、そうだね」


先生はニコッと笑った。


その笑みはまるで天翔る鳥がさえずるかのようだった。


いつまでも見ていたくなる。


しかし、そんな願いもかなわず面会時間の終わりとともに先生は帰っていった。


1人の夜には慣れたはずだったけど、寂しいものには変わりない。