「私…」


あんなに先生に言わないと決めていたのに、私はこれまでのことを話した。


謎の手紙。


警察に言おうとした時にかかってきた電話。


それから何日も経ってから来たメール。


それを先生に言えなかったことによって生じた気まずさから、美綺さんや鹿沢くんと会う日も増えたこと。


「そうだったのか。俺が疑惑を抱いている間、お前は1人で悩み、戦っていたんだな。もっと早く気付いてやれば良かった」


「先生のせいじゃないですよ。悪いのは魔王、そして写真を先生に送った犯人です」


「写真を盗撮して送った奴は魔王じゃないかもしれないのか?」


「はい。しかし、おそらく魔王はあのオルゴールを送ってきた犯人と同一人物とみてほぼ間違いないと思います。彼は電話で「お前達は、悪夢を見ることになるだろう」って言っていました。つまりどちらか1人ではなく私達2人を狙っているのではないかと」


「そうか…。もうあんなに前のことなのにな」


「え?」


「いや、なんでもない」


そう言って先生は口を手の甲で隠した。


額にはうっすら冷や汗がにじんでいる。


その様子を見た私はこう言う。


「私だって、目の前で大切な人が苦しんでいるのを黙って見ているなんて嫌です」


「え?」


「先生の過去って何なんですか?」