「ごめんなさい。私、先生の考えていることも知らないで勝手なことを」


「謝るなよ。俺もお前のこと、信じてやれなくてごめんな」


「いえ、それに指輪までなくしてしまって」


「流星。そんなにこだわらなくていいんだぞ。たとえ指輪をなくしてもお前への気持ちは変わらない」


「え?」


「つまりな…指輪だけが愛の証明ってわけじゃないってことだ」


そう言って先生は、まるで壊れやすいものを置くようにそっと私から手を離し、背中を向けてしまった。


おかげで顔は見えないが耳は真っ赤だった。


「先生?」


「だ、だからな?好きだから不安になったりむきになったりしてしまうのであって…」


勝手に話を進める先生を笑いながら見て思った。


私と先生の間にクレバスが出来てしまったのも、きっと愛の証明なのかもしれない。


だって嫌いな人だったらどうでもいいって思うから、疑ったりしないもの。


「なぁ」


先ほどとは打って変わって真面目な表情の先生。


「はい?」


「結局、お前が隠していたのは何だったんだ?」


「え」


「痩せるほど悩んでいたなんてよほどのことだろう。もう見ていられないんだ。目の前で大切な人が苦しんでいるなんて耐えられない」


「好きだから不安になったりむきになったりしてしまう…」


先ほどの先生のセリフがよみがえった。