それから私は街をひたすら走って、走って、走った。


ただ本能のままに走る。


気付くと土手に来ていた。


草が生い茂り、街の明かりはすでに遠くて数メートルおきに設置された街灯と月明かりだけが頼りだった。


とても都会とは思えない。


私はなんとなく吸い寄せられるように、草木をかき分けて川原に座り込んだ。


本当に、あのクリスマスイブと一緒だ。


違うのは、季節と場所。


それから、先生が私を捜してくれているという保証がないこと。


あの時は事実を信じたくなくて、いきなり家を飛び出しただけだった。


でも今回は、自分を信じてくれないことが悔しくて、悲しくてしまいには最愛の男性(ひと)をバカ呼ばわりして家を出てきてしまった。


ただでさえ怒らせていたのに、こんなことをしたら火に油を注ぐようなものだろう。


何が「先生のバカ!」よ。


私の方がよっぽどバカじゃない。


先生は勘違いしただけであって何も悪くない。


悪いのは盗撮して先生に写真を送った犯人と、怒る先生を前にうまく真実を伝えられなかった私。


どうすればいいんだろう。


犯人は魔王と決まったわけではないから、魔王を問い詰めるわけにもいかない。


私はため息をつきながら近づいてにあった石を投げる。


石はボチャンと音を立てて川の中に消えていっただけだった。