なんでだろう。


先生に抱きしめられると胸がときめくのに。


愛を感じるのに。


なのにこんなことを言っている。


「ごめんなさい」


「謝るなよ…」


「だって」


「言いたくないならいいんだ。だが、さっきも言った通り心配なんだ。何かあったんじゃないかって」


私は首を横に振る。


己を責める先生を見たくない。


「そうか」


寂しげにそう言って先生は私からすっと離れる。


とたんに温もりもなくなって、抱きしめられた時の感触だけが体に残っていた。


それから先生との仲はなんとなくギクシャクしている。


逆に美綺さんと会う機会は増え、鹿沢くんともたまに会うようになった。


だけど、これだけは言っておく。


私は鹿沢くんに恋心を抱いているわけではない。


彼は大切な友達だ。


しかし、そんなことは本人にしかわからないものだ。


ある日、美綺さんと会って夜に帰ると先生はものすごい怒りオーラを発していた。


「流星、これはどういうことだ!?」


突き付けられた茶封筒を開けてみる。


「…!」


中に入っていたのは知らぬ間に盗撮されたのであろう、鹿沢くんと私のツーショットの写真が数枚。


写真の中の笑い合う2人は誰が見ても幸せな恋人同士だった。