「流星」


茹(ゆ)でていたブロッコリーがちょうどいい固さになった頃、いきなり先生が私を呼んだ。


「きゃっ」


驚いたあまり、思わず手に持っていた菜箸を落としてしまった。


ただ呼ばれただけなのに、どうしてこんなに驚いてしまったのかわからない。


「最近、やっぱりお前、おかしいよ」


「そんなことないです」


「いや」


強い口調に思わず振り向くと、先生の目は力を帯びているように見えた。


そのまま見つめることしか出来ない私。


「何かあったのか?」


「ないですよ、何も」


背中を冷や汗がつたう。


ヘビに睨まれたカエルの気分だった。


「なぁ、知っているか?」


私はいつのまにか、背後には壁というところまで追いつめられていた。


先生は恐ろしい目で続ける。


「人間ってさ、嘘をつく時は視線が左上になるんだ。今のお前、まさにそうだった」


「う…」


怒っている様子の先生を前にどうすればいいかわからなくなる。


思考回路がショートしてしまったように思えた。


「俺、お前が心配なんだよ…」


切なげにそう言った先生は、額同士をぶつける体勢になって私を抱きしめた。


お互いの服を通して優しい温もりが伝わってくる。


なのに…。


気付くと私は体をカタカタと震わせていた。