それから私と美綺さんは週に何回か連絡を取っていた。


ある日、先生に彼女の話をすると先生は驚いた顔をした。


「源氏美綺だと!?」


「先生、知っているんですか?」


「彼女は10年ちょっと前の教え子だ。俺が中学校の教師をしていた頃のな」


「ええ!?」


なんだか世の中って広いんだか狭いんだかわからないな。


「へぇ、源氏がねぇ。あいつは病弱だったから心配していたんだが、元気そうで良かったな」


「え、そうなんですか?」


「ああ。しょっちゅう入院していた。だが、それでも入院中、必死に勉強してT大学附属高校に入ったんだ。立派なものだよ」


T大学附属高校といったら全国的に有名な私立の超進学校だ。


しかも学習面にしても学費にしても私には全然手が届かないレベル。


そんなわけで、そんなところに美綺さんを送り出した先生のすごさに改めて感心してしまうのだった。


「すごいですねぇ」


「そりゃどうも」


「先生には言っていませんよ」


「ひどいな。俺もT大学附属高校卒なのに」


「マジですか!?」


私は驚いて部屋に響き渡るような大声を出してしまった。


「知らなかったのか。ますますひどいな」


先生はそう言って肩をすくめた。


「だって聞いてませんよ」


「あれ?言ってなかったっけか」


「はい」


「そりゃすまない」


「別にいいですけど」


翌日、この会話を美綺さんに話すと彼女は驚いて立ち上がった。


「えぇっ!?流星さんって青山先生の奥様だったんですか?」


「あれ、言ってませんでした?」


「ええ」


「それはすみません」


…って、これじゃ先生の時とパターンが一緒だ。


「いいえ。それより流星さんっていつから先生が好きだったんですか?」


私はちょっと心外な質問をされて一瞬、戸惑った。